下顎は上顎を含む顔の上側と、筋肉や筋膜を介して密接に関係しています。
その中でも、下顎の外側にある筋肉や筋膜は触れる事ができるので、個別毎の認識はできなくても存在に馴染みが有ります。その点、下顎の内側に在る翼突筋はその存在を全く意識しません。
翼突筋は外側翼突筋(lateral pterygoid)、内側翼突筋(medial pterygoid)に分類されており、下顎骨の首に近い角張った部分(下顎角 )の内側にあって、親指の腹で触れる事ができるのは内側翼突筋(の深頭)です。
いっぽう、頭蓋骨の構成要素には蝶形骨(sphenoid bone)が有ります。顔面の正面から見た形状は、名前の通りチョウが左右に羽根を大きく広げたイメージで、あたかも目の奥に小さなバタフライマスクがある様な具合です。蝶形骨は細部が複雑で繊細な形なので、ヘルメットの様に脳を外部の衝撃から保護している他の骨とは違う役割を持っている様に感じます。形状はかなり凸凹していて神秘的でさえ有ります。
私は蝶形骨を見ると、アゲハチョウをイメージします。日本に生息する代表種はナミアゲハだそうですが、大きく広げた羽根の様な大翼(greater wing)部分と、その下に有ってちょうどナミアゲハの羽根の下がわに突き出た部分に相当する翼状突起(pterygoid process)がとても印象的です。
蝶形骨はクラニオセイクラル・セラピーで良く知られた脳脊髄液( cerebral spiral fluid)の体内を循環する動きと関連しますし、様々なホルモンの働きをコントロールする下垂体(pituitary grand)は蝶形骨のくぼみ(トルコ鞍 sella turcica)にスッポリと収まっています。
下顎に付着する翼突筋の「翼」は、蝶形骨の大翼と翼状突起を指しています。
従って、顎が固まって自由に動かない、という事は付着している蝶形骨の自由も阻害している事になります。その不自由さは、脳脊髄液の流れにを始めとするからだの調整機能に微妙に影響していると考えて良いのではないでしょうか。
そう言った点を考えても、顎を含めた周辺の組織の柔軟さを維持している事が大切な事が分かると思います。
それに、頭の深部とつながっている筋肉や筋膜を指で触れる(もちろん、皮膚の上からですが)と言うのも興味が湧きませんか。
参考資料 :
プロメテウス 解剖学アトラス 口腔・頭頸部