イワシのゴマ漬け 7

今日は港からまだイワシが届かない。頭の中では何キロにしようかずっと考えている。過去ずっと10キロ購入してきた。2018年は6キロ。この差はなにかと言うと、家に帰って始まる過酷な作業の時間である。イワシのゴマ漬けで何が一番大変かと言うと、頭と腸(ワタ)を取る作業である。購入はキロ単位であっても、作業はイワシ一匹づつ。一体何匹のイワシと向き合っているのか。数えてみたい気もするが、作業が始まるとそれどころでは無い。もう一つ知りたい事は、頭と腸を除いたら一体何キロ残るのか。でもそんな余裕は無い。これから家に帰って昼を食べて午後1時作業開始。10キロの時には夜7時、8時までひたすら作業が続く。6キロで5時ごろまでか。

そのために、事前の入念な事前準備が欠かせない。作業台には厚めの木製まな板、小包丁、特製指抜き、その他もろもろを前日までに取り揃える。作業台の左斜め下には小さなポリ容器を地面に置いてビニールの買い物袋を被せる。頭と腸入れである。右下地面に置いた入れ物から手一杯すくい上げたイワシをまな板の右側に盛り上げ、左手で一匹取り上げる。頭を右側、腹を手前にし、左指で魚にを抑えて、右手の小包丁で頭と腸を取る。身は両膝の間の地面に置いたバケツに左手で落とし、右手の包丁で頭と腸をまな板の左隅に移動する。特製指抜きは左手親指の保護のために、お茶缶のビニールの蓋を半分に切って曲げた自作品である。でも、ここ数年は指を切る事は無い。

すくい上げた分が終わると、包丁ですくって頭と腸を左の腸入れに放り込む。

左後ろ奥にはコールマンのガソリンバーナーで鍋に湯を沸かす。氷漬けの魚で冷たくなった指を温め、魚の血、油と細かい鱗で切れ味が鈍った包丁を浸す。目の前上には小型の電灯を設置して夜の作業に備えている。

そんな手順を考えていると、ようやく販売が開始されて、今年は三番目で6キロ購入。多分夕方5時前後には作業が終わりであろう量にした。

1時から開始した作業はやはり過酷であった。今年はすぐに背中が痛くなって、しばしば作業を中断してからだの強ばりをほぐしながらであった。それに地面に置いたイスの高さがよく無くて、途中で手近にあった板でイスのグラツキに対応。作業は大変であったが、ガソリンバーナーのおかげで寒さを気にせず、灯のおかげで手元ははっきり見える。

こう言った装備は毎年の尋常でない経験と工夫の成果である。一番はじめの年は外の蛇口の横にまな板を置き、しゃがんで作業をした。終わった時には左手親指はボロボロ。しかも横にエアコンの吹き出し口があったため、夕方になったら冷たい風が吹き付けてきた。泣きそう!

頭と腸を取り除いたイワシは桶に入れて水洗いをする。何度も水を替え、かき混ぜて血糊、鱗、残った腸を洗い流す。そう言えば、魚屋さんが付けている様なビニールの前掛けや肘までカバーする腕の長いゴム手袋も次第に買い揃えた。今では、水を多量に使うこの作業でも服がビチョビチョになる事もなく、水洗いの手元も冷たくない。

当日の作業はここまで、綺麗な水に一晩つけておく。翌日は塩漬け、その次の日に塩出しと甘酢漬けとなり、その次の日にいよいよイワシ、黒胡麻、鷹の爪、ゆず、大量の生姜で漬けこみとなる。この漬け方にも結構こだわりがあるが、それはいずれまた。