ウォーキングの科学 20

[P.42] 持久性トレーニングによって乳酸閾値以上の負荷の運動を行うと、血液量の増加や一回心拍出量の増加が起こり、それらが筋肉内での酸素利用速度の亢進と相まって最高酸素消費量を増加させる。

「持久性トレーニングと言えば、主として好気的代謝によるATP産生のみに依存する」と考える勝ちですが、クレアチンリン酸系、解糖系、酸化系がある時点では各々稼働しています。ただし、エネルギー供給比率と運動強度との関係を調査した研究は、ほとんど行われていない、との事です。従って、運動時に「クレアチンリン酸系」、「解糖系」、「クエン酸回路系/TCA回路系」、「電子伝達系」の各々がどの時点でどれだけ関与するのか、と言う私の疑問はまだ解消できていません。

本題に戻ると、「乳酸閾値(lactate threshold)以上の負荷の運動」との事のため、解糖系が働いて筋グリコーゲンの分解、ATP 合成とピルビン酸産生、および余剰ピルビン酸の乳酸化が行われている時点、と想像できる。なお、乳酸は中和されてピルビン酸となり好気的代謝系(遅筋線維と心筋のミトコンドリア)で使われたり、血中に溶け込んだ後に肝臓でグリコーゲンに再合成される。

従って、乳酸の生成と分解の差が血中の乳酸濃度として検出され、運動の激しさの目安として利用される。

軽い運動から徐々に強さを増していく場合、最初は乳酸の生成量と利用量が均衡しているために血中乳酸濃度は大きく変化しない。運動強度を上げていくと乳酸濃度が上昇し始め、ある程度の強度に達すると急激に増加する。

この領域を乳酸閾値(lactate threshold)と言う。

この時のからだの状況は、呼吸が激しい、心臓の鼓動が激しい、血流が増加する、等になるため、自律神経系では交感神経優位の状況である。どちらが原因でどちらがその後の反応なのかはここでは述べないが、最高酸素消費量をする運動状態に近い状況として判断できる。

参考資料 :