ウォーキングの科学 17

[P.36]末梢からたくさん血液が心臓に戻ってくれば、一回心拍量も増加する。 (心臓のスターリングの法則)

まず、心臓の構成と血液の流れを整理する。

末梢から → 大静脈 → 右心房 → 右心室 → 肺 → 左心房 → 左心室 → 大動脈 → 末梢へ

スターリングの心臓法則(Frank-Starling’s law of the heart) :

  • 末梢からたくさん血液が戻ってくれば、一回心拍量も増加する。
  • 心臓は血液が流入して心筋壁が引き伸ばされればされるほど、強く収縮しようとする。
  • 心筋の収縮エネルギーは心筋繊維の初期長に比例する。
  • 右心房の平均充満圧を増して行くにつれて心拍数が増加し、右心房の平均充満圧をある程度以上に増加させると、心拍出量は逆に減少する。
  • The greater the ventricular diastolie volume, the more the myocardial fibers are stretched during diastole. Within a normal physiologc range, the more the myocardial fibers are stretched, the greater the tension in the muscle fibers, and the greater force of contraction of the ventricle when stimulated. Ventricular output increases as preload (end-diastolic pressure) increase.        (心室拡張量が増加すればするほど、心筋線維は拡張時に伸ばされる。正常な生理的範囲内では、さらに心筋線維は伸ばされれば、筋線維のテンションはさらに高くなり、興奮した時に心室の収縮はさらに強くなる。 前負荷(拡張終期圧)が増せば、心室出力は増す。)

上記の様に、様々な表現がされているが、英文を見るとそれらは同じセンテンスに収まっている事が確認できる。

従って、一回の心拍量が多くなるためには、右心房に戻ってくる血液量が多い事が必要であり、P.35の表によるとアスリートは戻ってくる血液量が一般人に比べて50%多いと言う事になる。

なお、骨格筋と心筋はいずれもアクチン・ミオシンの連携で収縮を行うが、各々に違いがある。

  • 骨格筋 : サルコメア長が2〜2μにプレ・ストレッチされている状態で最大収縮力を示す。
  • 心筋  : 収縮前に伸ばされた状態の方が、より大きな収縮力を発生する。すなわち、たくさん血液が右心房に戻れば、強く収縮してより力強く血液を送り出す。逆に、一回の拍出量が低下すると、反射により心拍数が増加して血流量の埋め合わせを行う。

参照資料 :