ウォーキングの科学 13

[P.26] 加齢による体力低下の原因は、加齢による筋力の低下が主な原因となっている。これを加齢性筋減少症(サルコペニア)と呼び、髪の毛が白くなったり、肌にしわがよるのと同じメカニズムで起こる。

『運動生理学で扱う体力とは「持久力」と「筋力」』(P.15)との事であるから、持久力と筋力が年齢に応じて低下する、と言う事になる。また、持久力は好気的代謝に裏付けられた全身運動を基に発揮される事から、今回の話題は呼吸、代謝及び筋肉と年齢との関わりと言い換える事ができるのではないか。

ちなみに、「老人の体力とエネルギー代謝」によると、体力の構成要素はからだの形態的特徴(体構成)と運動能力の2点である。また体力構成要素としての運動能力としては、全身持久力、筋力/筋持久力、柔軟性があげられているので、この本ではその中の筋力に話を絞っている事になる。

参考資料:

次に、加齢による筋力の低下(サルコペニア sarcopenia)について。サルコペニアに関しては、多くの資料がネット上に見られるが、参考資料は分かっている事と不明な点などが整理されており、図解も明解で分かりやすい。

内容を要約すると、

  • 30 歳を過ぎると10年毎に約5%の筋量が減少。60歳を過ぎると減少率が加速。
  • 筋線維の萎縮(筋断面積の減少)と筋線維数の減少。
  • 速筋線維よりも遅筋線維で萎縮が顕著。
  • 筋線維組織が速筋化する。(疲れ易くなる、って事か? 疲労感とは別の話か?)
  • 筋肉の補修を行う筋サテライト細胞は加齢に伴い、量及び質(増殖機能)が低下して再生能力が低下。

従って、通常の生活を送っていても年齢を重ねるに従い、筋肉の量と質は変わる(劣化する)。

参考資料 :

「髪の毛が白くなる事と、加齢性筋減少症」との関係については、上記参照資料の要約でも分かる通り、筋力低下と白髪のメカニズムとが同じであるかは疑問です。その点、「幹細胞と老化」は朝日新聞系のVoiceと言うインタビュー記事で、論文形式では有りませんが明解です。

まず、髪の毛が黒い理由は、色素細胞が髪の毛を作る細胞に色素を供給するから、との事です。そして、色素細胞のもとになるのが色素幹細胞で、毛が生えかわるたびに色素細胞が供給され、そこからメラニン色素が産生されて黒髪となる。

一方、毛が白くなるケースでは未熟な色素幹細胞が間違った場所で成熟し分化する。このため、色素細胞を毛包の根本に供給できなくなる。この理由が加齢にある様ですが、加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)との関連は明確ではありません。

参照資料 :