[P.15 ] ウォーキングにおける「持久力」とは、どれほど速く長時間歩けるか、に影響する。
持久力は「行動を持続する能力」で、筋持久力と全身持久力です。
- 筋持久力(muscle endurance): 特定の筋肉が繰り返し収縮をどれだけ(何回)できるか。
- 全身持久力(whole body endurance): からだ全体の筋肉や心肺機能を使った運動を長く続ける能力で、スタミナが有る、あるいは粘り強い、と言った表現も使用される。
ウォーキングは全身の筋肉や心肺機能を使う運動です。ACSMではAerobic exercise(有酸素運動、cardiorespiratory endurance exercise 心肺持続力運動)の項に含まれています。
ここで私が分からない点は、「ウォーキングにおける持久力とは、どれだけ早く長時間歩けるか」の「どれだけ早く」です。持久力ならば、どれだけ長く歩けるか、で良いのではないか。
私たちが日常行う歩行は、立位であり、それだけでもからだ全体の筋肉を動員する事は間違い無い点です。歩行ではなくて、あえてウォーキングと言う場合には、日常の歩行とは違う何か暗黙の内に含まれる要素(例えば“早く”)が有るのだろうか。
厚生労働省のサイトによると、全身持久力は最大酸素摂取量により評価する、との事です。
最大酸素摂取量: 1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量
最大量と言うことは、ブラブラ歩きではなくて、極端に言うと息が切れる位、しかも1分間と言う一定時間内での話ですから、ウォーキングの尺度には、どれだけ長時間だけではなく、どれだけ早く(どれだけ心肺機能を動員できるか、どれだけ(特に)両脚を激しく動かすか)、も込められているのではないか。このために、「どれほど早く」と言う概念が組み込まれるのではないか。
今時点では、この様な理解とします。
[P.16] 持久力が高い人とは、ミトコンドリアで単位時間あたりに多くの酸素を消費できる人
ミトコンドリアで多くの酸素を消費できる、とはどう言う事なのか。
まず、関連しそうな「細胞呼吸」を明確にしたいと思う。
「呼吸」は、口、鼻から外気を吸い込んで、肺に溜まったガスを吐き出す、一連の動作を指します。酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出するガス交換です(外呼吸)。
では、「細胞呼吸」とは何でしょう。細胞では酸素を取り入れて、老廃物を排出する事が行われていますので、外呼吸と形態は相似です。その過程では、例えば体内のグリコーゲン(glycogen、グルコースが多数つながった多糖類)を分解してできるグルコース(glucose、ブドウ糖)などを元にエネルギーを得る行為が有り、そのプロセスそのものを細胞呼吸(内呼吸)と呼びます。
その細胞呼吸では、細胞内のミトコンドリアが、酸素を使ってブドウ糖、脂肪酸を燃やし、ATPを生成する。その酸素は私たちの肺から取り込まれ、赤血球中のヘモグロビンによって体内に送り込まれます。ちなみに、細胞内ミトコンドリアでの酸素消費以外でも、若干の酸素が血管壁で消費されます。
ミトコンドリアでのATP生成は順番に3つの過程から構成されます。解糖系、クエン酸回路系、電子伝達系。
解糖系はミトコンドリアの中と言うよりは、ミトコンドリアが居住している細胞内の細胞質(cytoplasm)で起こり、酸素の供給を必要とはしません。(無酸素系エネルギー供給機構)。もっとも、ミトコンドリアの外膜と内膜の間(膜間腔)はミトコンドリア外の細胞質と同じpHとイオン組成ですので、この範囲ではミトコンドリアの外側、内側は余り意味のない区分かも知れません。
クエン酸回路系から以降を有酸素系エネルギー供給機構と呼びます。プロセスを回すためには酸素の供給が不可欠ですが、クエン酸回路系では電子伝達系で産出される補酵素が必須ですが酸素そのものは必要としません。直接的には電子伝達系において酸素O2の供給が必要となります。
従って、「持久力が高い = ミトコンドリアで単位時間に多くの酸素を消費できる」は無酸素系、有酸素系の一連エネルギー供給機構が活発に回って単位時間内に多くのエネルギーを算出する、あるいはミトコンドリアの量を増やして数で勝負する、事です。
余談ですが、筋肉の稼働だけで無く、肝臓における三大栄養素の代謝やアルコールなどの解毒処理、胃腸の消化吸収、腸の蠕動運動、体の修復(細胞の修復)などの代謝が発生する際には、エネルギーとしてATPが必要。
例 :
- 解糖系: 上記記述
- 筋収縮
- イオンポンプ (細胞が物質を濃度勾配に逆らって輸送する作用)
- 生合成 (生物体によって行われる合成化学変化)
- 発光タンパク質 (ホタルの光など)
- 発電 (電気ウナギの発電)
- 発熱 (生体反応で発生)