ところで、上記の3胚葉説で今まで全てが説明されてきました。ただ、これは決定的に確立されたものではない様です。以下は、2011年に発表された大阪大学大学院生命機能研究科 竹本龍也氏らの論文の要旨の一節です。
『動物の体はどのようにしてつくられるのだろうか。これまで長い間信じられてきた説では、動物の体を形づくる様々な組織や器官はいずれも、まず発生プロセスの初期に外胚葉・中胚葉・内胚葉という3つの領域がつくられた後で、それらの中から発生してくるという(三胚葉説)。例えば、神経系や表皮は外胚葉に、筋肉や骨は中胚葉に、消化管は内胚葉に由来するという具合である。したがって、神経系は外胚葉ができた後に表皮から分離してできるものであり、中胚葉に由来する筋肉や骨とは別のプロセスを経てつくられると信じられてきた。しかしながら、近年はこの従来の定説に合わない研究結果が増えるにつれ、長い間信じられてきた説が疑われるようになってきた。』
この様に従来の三胚葉説から新しい枠組みで発生の解明が進められている様です。それはそれとして、現時点では新しい説で全てが語られている訳ではないので、3胚葉説も参考にしながら以降の話を進めます。
胎芽(embryo)のrostral –caudal方向に伸びた神経管(neural tube)と脊索(notochord)を挟んだ両内側から外に向かって(medial – lateral方向)、中胚葉は沿軸中胚葉(paraxial mesoderm)、中間中胚葉(intermediate mesoderm 将来,腎臓や副腎,生殖腺へと分化)、側板中胚葉(lateral plate mesoderm 体壁、循環器、四肢に分化)に分かれる。
頭部と尾部が作られた後、沿軸中胚葉は新しい細胞が尾部の部分で増殖し、頭部と尾部の間に一対づつ首、胸、腹、腰となる塊が順番に増えていきます(rostral –caudal方向)。ヒトの場合は、約8時間毎に一対づつ増えて30対でき、これを体節(somite)と呼ぶ。
ちなみに、同じ時期には消化管の前方部、口腔・咽頭部に弓状の構造物の咽頭弓(pharyngeal arch)が現れます。
体節はのちに脊椎骨を含む骨格(硬節 sclerotome)や骨格筋(筋節 myotome)、真皮(皮節 dermatome)などに分化(細胞が分裂・増殖してそれぞれ特定の形態・機能に変化)します。(ventral – dorsal方向)
なお、体節の形成過程では、dermomyotome(皮筋板)のステップをまず記述するケースも有ります。
体節の細胞は、体軸(rostral –caudal方向)と垂直方向(medial – lateral方向)に遊走して、四肢(手足)、腹部などに分化する集団と、遊走せずにそのまま背筋などに分化する集団に分かれる。
ここまでが筋肉の全体像になります。では、その中の細胞たちはどうなのでしょうか。
参考資料 :
- Tbx6に依存したSox2遺伝子の制御が、体軸幹細胞の神経系と中胚葉への発生運命を決める 竹本龍也 他
- 筋骨格の再生をささえる幹細胞システム 三菱化学生命科学研究所幹細胞研究ユニット 橋本有弘