○ 炎症期 inflammation phase
異変シグナルに刺激されて血管の内皮細胞 (endothelial cell 内腔表面を覆う1 層の扁平な上皮細胞群) 間に隙間ができる事で、血管からリンパ球、白血球、単核球が流れ出て、細胞外マトリックス内を傷口に向かって遊走(migration)する。
単核球は貪食作用によってマクロファージ(macrophage 貪食細胞)となり破壊された細胞などを取り込み掃除をする。これがさらに化学物質を放出してシグナルを発信。
この時点での体表面に現れたり感じたりする症状(炎症反応 inflammatory response) :
@ 毛細血管の透過がうながされ、細動脈が拡張して血流が増加し細胞の活動を促すと共に、血液量の増加で皮膚が赤く見える。 (発赤 redness)
@ マクロファージ、白血球などの貪食細胞(phagocyte)が、傷口の死んだ細胞を取り込む。この時の化学反応で発熱物資を産出する。 (発熱 heat)
@ 貪食細胞が放出する化学物質に、細胞外マトリックス内の自由神経終末が刺激されて痛みを感じる。これにより運動の制限が生じ、自動的に安静状態が保証される。 (疼痛 pain)
@ 放出された化学物質により、毛細血管の透過性が増す事で通常は血管内に留まる物資が流出。その浸出液で組織が腫れる。 (腫脹 swelling)
なお、炎症は細菌感染、化膿でも起こります。
○ 増殖期 prolification phase
マクロファージの活動で放出された化学物質に刺激されて、細胞外マトリックス内の線維芽細胞(fibroblast)が損傷領域に呼び寄せられて(遊走)、修復の主な材料であるコラーゲン線維を産出すると共に、血管では内皮細胞に対して新生血管の形成(angiogenesis)の司令が出される。
線維芽細胞が産出するコラーゲン線維に支えられて、毛細血管が生成・発達する事で新鮮な血液が線維芽細胞に栄養や酸素を供給して、さらにコラーゲン線維の産出が促進されるという自己増殖サイクルができあがる。この様に線維芽細胞、毛細血管、コラーゲン線維の共同作業により作られる、傷口の欠損部分を埋める組織を肉芽細胞(granulation tissue)と言います。
肉芽細胞はコラーゲン線維以外のさまざまな物資や、コラーゲン線維同士の架橋(分子間の連結)により、徐々に真皮の様に丈夫な組織になっていく。さらに、上皮を構成する基底細胞が肉芽細胞上に移動し、増殖して表皮が形成される。
参照資料 :
傷と治療の知識 NPO法人創傷治療センター ホームページ
創傷治癒 朝霞台中央総合病院 大沢草宣
Understanding the healing stages of wounds. WOUND HEALING
The 6 steps of the wound healing process. WOUND HEALING