エラスチン線維/弾性線維 : elastic fiber
私達のからだには、血液を脈動により全身に配布する動脈、呼吸運動に伴い大きさが変わる肺、などナド、筋線維のように神経信号で自らが主体となって動く訳ではないが、外部からの力が加わると伸び、力が無くなると元の大きさに戻る部位が有ります。
外力によって変形した物体が、その外力が除かれた時、もとの形にもどろうとする性質はエラスチン線維が担当します。真皮にこの線維が存在すると言う事は、血管や肺と同様に伸縮性が必要なからだの部分として位置付けられていると言う事になります。ただし、その含有量は、おおよそ項靭帯(コウジンタイ、ウナジジンタイ) 80%、動脈 50%、肺 20%に対して、真皮では5%程ですのでそれ程の伸縮運動を必要としている部位では無いと言う事も言えます。
ここで、エラスチン線維の生成と構成を確認しますが、エラスチン線維は最近になってようやく解明が進んでいるとの事です。それはエラスチン線維が生体組織の中で、もっとも溶解されにくい有機化合物(不溶性)である事に理由がある様です。溶解処理できないと成分の分析ができないと言う事でしょう。
真皮では、コラーゲン線維と同様に線維芽細胞でエラスチンの前駆体であるトロポエラスチン(tropoelasutin)が作られ、この可溶性の分泌タンパク質は細胞外に放出されます。細胞外に放出されたトロポエラスチンは体温(37℃)付近の温度で自己凝集(コロイド溶液のコアセルベーション現象)によりまとまる。
さらに、線維芽細胞から生まれたミクロフィブリル(microfibril)と総称される結合タンパク質の線維が、自己凝集したトロポエラスチンの沈着と架橋の足場を提供し、酵素の助けも借りて伸縮性の有るエラスチン線維となる。このミクロフィブリルは、それ自体ある程度の伸び縮みができる線維である。
エラスチン線維は上記の過程で不溶性となり、物理的な強度を獲得します。
一方、代謝回転が遅いため、再生されにくく劣化が蓄積し組織の弾性低下をもたらします。この様に自然老化 (日光にほとんどさらされることのないからだの部位、例えば臀部や腹部など下着に隠れている部分の皮膚にも生じる加齢による変化) によりエラスチン線維は減少します。また、長い間紫外線を浴び続ける事によりエラスチン線維の分解につながる酵素の発現を誘導して、劣化消失(光老化)する。こうやって、弾力性が無く硬化して皮膚にはシワが増えていきます。
真皮は乳頭層と網状層に分かれますが、乳頭層でのエラスチン線維は細く縦方向 (表皮に対して垂直) に並んで基底膜の接着しており、網状層になるとコラーゲン線維束の間にほぼ均等に有り、横方向(表皮に対して平行)に太い線維が並んでいます。
参照資料 :
衰えたエラスチン線維と「EMILN-1」の関連性を解明 株式会社ファンケルのホームページ
(提示されている図1では、真皮内の線維の縦の配列[オキシタラン線維]と横の配列[エラウニン線維]の様子がよく分かります。)