真皮を構成するコラーゲン線維の大部分はI型コラーゲンで、太い繊維を作りますが、コラーゲン線維の配置や形状などはからだの部位により異なります。
線維の方向が一方向に揃ったり、不揃いだったり、密であったり疎であったり、縮れていたり、真っ直ぐだったり、太かったり、細かったりする事でからだの部位毎の特性を際立たせています。真皮では 線維の方向が不特定で密度も粗く、細胞間をゆるく結合する役割を持っています。そして、その隙間には毛細血管や神経が走っているので、外部からからだに衝撃や圧力が加わったり、激しい運動をしても血管や神経の相対的な位置はズレないで適正な位置を保つ事ができるわけです。
なお、コラーゲン線維は細胞ではないので、死ぬということはありません。繊維芽細胞(fibroblast)から新しく作り出され、古くなったもの(2〜6年程と言われている様です)は酵素などで分解されます。ただし、年齢が上がると新規に作られるものが少なくなり古いものが残るので、基質の水分の減少も加わって見た目にはシワシワとなり皮膚の老化と認識されます
老化だけではなく、生活習慣や過剰あるいは過少なからだの使い方での劣化のために、線維の隙間に絡まっている毛細血管や神経末端部の働きにも影響が及ぶ事が考えられます。そうすると代謝機能の減少により細胞は不活性のスパイラルに陥り、神経機能の過敏によるノイズの増加と感覚の乱れ、または鈍麻(ドンマ : 感覚がにぶくなること)による適正な反応の減少や外界との断絶などが起こります。
なお、圧電効果(ピエゾ効果 piezoelectric effect)にも触れておきます。
コラーゲン線維はアミノ酸分子がペプチド結合により繋がっています。ペプチド結合では、一方の分子の−CO− の“O”がマイナスに帯電し、となりの分子の−NH− の”H”がプラスに帯電した、双極子(dipole) となっています。
通常は多数の双極子同士が釣り合った状態です。外部から力が加わって変形しお互いの位置がズレると、電気的バランスが崩れて分極が発生しますので、この状態を打ち消すために微弱な電流が流れる事になります。
全身に配置された無数のコラーゲン線維と、その分子構造の特性から生まれる電流の発生により、からだのある部分に発生した情報が身体中に素早く伝播するのだとの考えもあるようです。
さらに、私たちのからだは常に微妙にかたちを変えています。それが生きている証拠と言える訳ですが、上記の分極の発生によってその都度微弱な電流が流れていると考えられます。この様な状況は、私たちが常に重力場に置かれている事と同様に当たり前の事実として肉体や精神に影響を与えていると言えます。
なお、真皮ではありませんが、ピエゾ効果がよく引き合いに出される事例は、人の大腿骨の特異な形状の骨形成プロセスではないでしょうか。