Myucroのからだ世界 11

それでは、コラーゲンをもっと良く見ていきます。
タンパク質ですから、たくさんのアミノ酸分子がペプチド結合しますが、このアミノ酸分子に特徴が有ります。グリシン(glycine)と言うアミノ酸分子が、長い鎖状分子の3つ目毎に結合されます。(1次構造 primary structure)
−−−−GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY GXY−−−(つづく)−−−
G : glycine グリシン
X とY : 他のアミノ酸分子 ですが、一番多い組み合わせは X = プロリン Y= ヒドロキシプロリンです。

このペプチド結合には、極性(共有結合している2原子間に見られる電荷の偏り)の強い部分が有るために、長い鎖状分子内で水素結合がたくさん起こります。その結果、タンパク質分子は右巻きのラセン構造(α-ヘリックス構造)になる。 (2次構造 secondary structure)

このα-ヘリックス構造の鎖が3本が集まって、ゆるやかな右巻きの構造(トリプルヘリックス構造)となり、それを1単位としてさらに分子間会合により高次の構造となります。これを原線維(fibril)と言います。

ところで、コラーゲンのヘリックス構造には、2つの解釈がある様です。
一つは、triple helix と呼ばれ、アミノ酸3残基(グリシン+プロリン+ヒドロキシプロリン)を繰り返し単位としてできあがる単純ラセン(右巻き)が3本集まって、3本がさらにラセン状に絡まる。上記の説明そのものです。

もう一方は、coiled coilと呼ばれ、1つのアミノ酸残基を繰り返し単位と考えて3残基で左巻きに1回転する、それがさらにラセンに巻いている。

私にとってはどの様な解釈でも良いのですが、当初は右巻きラセン(ヘリックス)と理解していたのですが、ある時に「左巻き」との記述に出逢って戸惑った事が有ります。色々と調べると上記の様な解釈の違いが有りました。

さて、原線維が集まって線維(fiber)となり、さらに集合体(線維束 fiber bundle)となった状態でからだに存在しています。コラーゲン線維は糖鎖と同様に分子(コラーゲンの場合はアミノ酸分子)の鎖から始まりますが、それが幾重にも集まり分子間で引き合い「線維」としての働きをする事になります。

ちなみに、真皮上層(乳頭層と乳頭下層)では、細いコラーゲン線維がまばらであるが、網状層ではよく発達した太い線維が密になっている(collagen bundle)。

コラーゲン線維は、線維方向への張力に強い抵抗を示すが、伸展性に乏しい。水に溶けにくく(不溶性 insoluble)、壊れにくいため組織の形状を保持したり、構造材としてからだを形作るのですが、それだけでは無く多様な働きをします。なお、個別の線維としてだけでなく、コラーゲン線維の集団としての相互作用を伴う特徴もあります。
・組織や器官に機械的な強さを与える。
・組織や器官に柔軟性を与える。
・細胞接着の足場となる。
・細胞との相互作用を持つ。
・周囲に糖やタンパクを含むゲル状成分を保持する。
・さまざまなシグナル伝達経路に関わる。

基質の主成分として、コラーゲン線維は人体の全タンパク質の30%を占めていると言われますが、真皮に関して言うと乾燥重量の約70%をコラーゲン線維(I型コラーゲン)が占めているとの事です。従って、例えば羊皮紙の様なゴワゴワ感のある解剖写真の皮膚や、私達が普段使用する動物の皮製品(動物の真皮を加工したベルトやバッグなど)は、水分がなくなって硬化したコラーゲン線維そのものです。

別な見方をすれば、生身の私達のからだを触ってもその様な線維質のゴワゴワ感がしないのは、基質に含まれた水分がいかに多量で、からだにとって重要であるかを物語っているのではないでしょうか。

参考資料 :
Job’s Body A handbook for bodywork. Deans Juhan
コラーゲン結合タンパク質を介した生命プロセスの活性化機構 生化学第80巻第6号 西田紀貴、嶋田一夫
コラーゲンとは コラーゲンとヒアルロン酸の全容ホームページ (皮膚科専門医との事ですが氏名不明)
コラーゲンの分子構造・高次構造 奥山 健二 、川口 辰也