Myucroのからだ世界 7

基質 : ground substance
私にとっては一番イメージがわきにくく、従って最も理解し難い、一方そのためにとても興味をそそられるのが基質です。透明な液状で粘性が有るので、見た目の印象は卵白(卵の白身)の様だと表現されます。実は、動物の粘性のある物質から発見されたムコ多糖(mucopolysaccharide ; muco- 粘液 )が基質の性格に大きく関連しています。

詳細に移る前に、「糖」を整理する事にします。糖は日常生活で身近な存在であるので、曖昧な言葉の使い方をしているかも知れません。また生化学など最先端の分野でも重要な話題ですので、正確に理解をしておきたいと思います。

私が取り上げる糖は糖質(carbohydrate / saccharide)です。これは炭水化物(carbohydrate)から食物繊維(消化されない多糖)を除外した範囲を指します。糖質は単糖類(monosaccharide)、二糖類(disaccharide 単糖2分子がグリコシド結合して1分子となった糖)および多糖類(polysaccharide グリコシド結合によって単糖分子が多数重合した糖)に分類されます。なお、日常よく使われる言葉の糖類(sugar group)とは、単糖類と二糖類を合わせた範囲で、砂糖、ブドウ糖、果糖などです。

多糖類はホモ多糖(homopolysaccharide 同一の単糖のみから構成されるもの)とヘテロ多糖(heteropolysaccharide 数種類の単糖から構成されるもの)に分類され、ムコ多糖(動物の結合組織や体液中に存在する)はヘテロ多糖の一部です。なお、狭義のムコ多糖、すなわちグリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)と言うケースがありますが、ここでは真皮に含まれるムコ多糖=グリコサミノグリカン(glycos-amino-glycan GAG )として話を進めます。

関連する言葉で、糖鎖(sugar chain)と言う言葉が有ります。各種の単糖類がグリコシド結合によってつながりあった一群を言い、GAGが良い例です。結合した糖の数は2つから数万まで様々であり、2糖類、多糖類の様な糖同士だけでなく、タンパク質や脂質とも結合して多様な分子を作りますので、これからは糖鎖について述べると言い換える事ができます。

グリコシド結合 : 糖分子と糖分子あるいは糖分子と別の有機化合物とが脱水縮合 [水分子を吐き出して、新たな化合物となる]して形成する結合形態

GAGは多数の硫酸基(−OSO2O−)とカルボキシ基(−COOH)を持ち、強くマイナスに帯電しているためにきわめて水和性(水分子との相互作用が強い)が高く、体内での保水の重要な役割を負います。また、マイナス同士の反発力のために、鎖は直鎖状に連結してラセン状となっています。